入試世界史研究会

世界史を得点源にしましょう!!

パッと簡潔にoverview!【名大世界史 2022】

2022年の名古屋大学の世界史の講評を行いましょう。著作権の関係から問題文全体の掲載はやめておきます。

 

第1問

出題にミスがあることに本番中の受験生が気づいたようです。あえて厳しいことを言っておきますが、こういうことは断じてあってはならない。何人もの教授が問題に目を通して一人も気づかず、本番で高校生が気づくというのは教授陣の職務怠慢です。名古屋大学はちゃんと反省して、二度と受験生を焦らせるようなことをしてしまわないようにしてほしいと思います。テーマ自体は名古屋大学の大好物である中国史でした。過去問をしっかりと対策していた人は内容的には躓かなかったと思います。「外戚」という言葉の説明は、日本史では行われるのでしょうが、世界史では案外と説明されないこともあり、わからなかった人もいるのではないでしょうか。名古屋大学は意味を知ってそうで実は正しく説明しにくい用語の説明を要求してくる大学です。いわゆる一問一答には出てこないような用語こそ、その意味を正しく説明できるようにしておくことは、名古屋大学の受験生には特に求められることです。(もちろん他大の受験生も知っておくべきではありますが。)

 

第2問

第1問で注意したことがこの問題でもいえそうです。ブロック経済の説明です。ほかの一問一答はすべて基礎レベルなので落とすわけにはいきません。近代における世界の一体化は、モノの移動とヒトの移動によって急速に進んでいきます。それを支えた「科学技術」というものもいつ出題されてもおかしくありません。

 

第3問

5つの史料を出題して云々というのは、名古屋大学の第3問では典型的な出題です。ヨーロッパではコロナ禍でユダヤ人への差別が強まったので(特にSNSには反ユダヤ主義的な投稿が急増し、ヨーロッパでは社会問題になった)、ユダヤ人差別に関連する出題が増えるだろうと予想していました。本会の予想問題でもユダヤ人関連の出題をしておきました。ドレフュス事件を的中させることはできませんでしたが、予想問題を解いてユダヤ人の歴史を復習しておいた人はよく書けたのではないでしょうか。それから、ロシアがクリミア戦争で口実にした「オスマン帝国内に住むギリシア正教徒の保護」は、現在のウクライナ侵攻に通ずる側面があります。来年度の入試で他大を受ける人も出題される可能性が高いので、覚えておきましょう。

 

第4問

東南アジア史を出題してきました。阪大も京大も東南アジアを出しましたね。ただ本問では後半で「インド化」を書かせています。このような地域間の交流や交易を出題するのは名古屋大学らしくてよいのですが、「インド化」の見方は最近相対化されているので、さらに一歩踏み込んで、東南アジアの歴史がいかに独自性を有するのかを書かせても面白かったと思ってしまいます。実際にそのことを阪大の予想問題でずばり出題していましたら、少し残念ではあります。名古屋大学としては、あえて相対化されているインド化に再び焦点をおくことで多角的な視点を失わないように呼び掛けているのかもしれません。そうだとしたら、それはそれで出題の意味があるようにも思います。