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2023年 共通テスト 世界史B 講評

昨日実施された共通テストの世界史Bについて、簡単な講評を行います。

各大問の太文字は、その大問の復習ポイントです。第一志望の受験日までによく復習しておいてください。良いことがあるはずです。

共通テストの講評

全体の講評

出題傾向としては、資料の分量が増えたこと、組み合わせ問題が減ったこと、問題レベルが難化したことが挙げられていました。これは巷の意見です。しかし別に問題が難しくなったイメージはありません。解き方のツボさえ押さえておけば、今回も十分高得点が目指せます。後述するように、大量の資料に付き合わないことがポイントです。

 

第1問

 Aでは女性の参政権獲得、Bでは中国史の中の女性史にフォーカスが当てられました。特に問4・問5では、中国の北方民族や北朝の習慣がその後の統一王朝に与えた影響を資料から推測する必要がありました。昨年秋に出版した、名古屋大学の予想問題で中国の女性史をテーマとする文章をリード文として提示しましたので、名古屋大学の志望者で予想問題を購入されていた方は既視感を感じたかもしれません。儒教についても名古屋大学の世界史をよく勉強した人であれば、知っている内容だったのではないでしょうか。女性の立場をテーマとする問題は東大でも一橋でも出題されたことがあり、特に今年はカタールw杯に関連してイスラームの女性史をテーマとする問題が難関大学でも出題される可能性が大いに考えられます。問5で出題された、実は唐が北方の(鮮卑系の)流れをくむ国であることは忘れている人も少なくないので、注意してください。

 

第2問

 やはり出ましたね。国家元首にまつわる問題。

 今年注目! 世界史トピック5選【2022年度最新版】 - 入試世界史研究会

今年の注目トピックのうちの1つとして挙げていましたが、出題されました。Aではフランス王家に関する図と家系図、Bではファーティマ朝のカリフの正統性を論じた資料を題材としていました。レベル感もちょうどよく、難関大学を目指す受験生は満点で突破してほしいパートになりました。

 カタールw杯の影響でイスラーム世界の政治史、カリフやスルタンの正統性も今年の難関大学では狙われる可能性があります。昨年政権を奪還したタリバンは、ワッハーブ派の影響を受けています。問4の(エ)に登場しましたが、こちらも説明できるようにしておきましょう。

 

第3問

 Aではナポレオン、Bでは科挙、Cでは中国における書籍分類の歴史をテーマとする授業風景が資料として提示されました。なんだか一橋大学名古屋大学の受験生が得意そうなセットが再び並んだ感は否めませんが、問題の内容自体には大きく影響していないのでよしとしましょう。衝撃の誤植もありましたが、これも解答に大きな影響をあたえるミスではないので見逃しておきましょう。2021年のマクロン大統領の演説を今さら史料として持ってくるのにはやや違和感もありますが、テーマ設定は意識が高かったと思われます。問題の品質に反映されているかは別問題ですが・・・

 B、Cでは問われた知識が少し細かく、回答に手間取ったかもしれません。特に国史に関して特に出題が多かったように見えましたが、東京、京都、一橋、名古屋、筑波を受ける人はこの大問で間違えたところはよく復習してください。

 

第4問

 Aではビザンツ帝国ウマイヤ朝の貨幣の図、Bではマラトンの戦いに関する資料、Cでは中世のブリテン島に関する資料と解説が題材となりました。

 どうでもいいことなのかもしれませんが、一番初めのリード文に、資料は不可欠であると書いてあるのですがこの資料は「史料」という漢字を使うべきだと思いませんか? この「資料」という漢字は例えば現在の書物であったり会話文であったりを指すときに使う言葉で、史料は歴史的な研究の対象となる材料のことを指すと考えられます。言葉の細部にこだわってほしいところです。

 貨幣についてある程度の知識があれば簡単な問題ですが、盲点だった受験生も少なくないようで、Aを難しいと感じる人は多かったようです。この3年間の共通テスト全体でよくわかったのは、史料にも資料にも全てに付き合ってはいけないということです。まずは問いの文を読み、回答に必要な分の史料・資料のみを参照すべきなのです。共通テストの世界史は基本的にはセンターの基礎知識を持っておけば9割近く取れます。のこり1割くらいが読解力勝負になるのです。でも現代文よりはるかに簡単な読解問題で、それこそ言葉の意味さえ分かればだれでも解けるような難易度にすぎません。来年度以降に受験生になる人は、共通テストが今と同じような出題を続ける限り、この解き方で回答していけば問題ありません。形式の慣れもいいけれど、まずはセンターレベルの知識です。それをお忘れなきよう。

 ただし、この大問の特にBは、読解力が高い必要があるし、分量も多かったですね。こういう問題に時間をかける必要があるからこそ、簡単な知識問題はすぐにクリアできるように、基本的な知識は頭に入れておくべきです。

 Cについては、やはりイギリス史が出ましたね。エリザベス女王の逝去を受けて、今年は難関大学でも出題が予想されています。次の第5問で同じですね。

 

第5問

 Aでは20世紀東南アジア各地の輸出先とその比率、Bではイングランドの都市人口と農村農業人口の比率の統計が題材となって、「歴史統計」をテーマとした出題になっています。東南アジアはここ最近様々な大学で出題されてきました。今年も十分に出題される可能性があります。また今年は移民がテーマになりました。昨年も華僑が出題されたように、「移民」をテーマとする問題は近代史で大人気なのです。さらにエリザベス女王が亡くなり、イギリス史はしっかりと勉強しておくように言っておいたはずです。

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問題の内容について

 昨年は講評のページで学習ポイントをたくさん示しました。昨年も作りましたが発展問題として二次試験までに共通テストの重要なポイントをまとめておきます。今年の講評は、The 評価っぽくなりましたので、発展問題で復習し、二次試験に備えてください。

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