入試世界史研究会

世界史を得点源にしましょう!!

2023年 東大オープンの講評

「学ぶ力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大独学 [ 西岡 壱誠 ]

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皆さんお久しぶりです。ブログの更新は大変久々になりましたね。

今回は、K塾の東大模試について講評を行います。本会の講評は、講評と言っても、内容の解説をするわけではありません。我々は知識については直前まで教科書でも史料集でも読めばいいと考えます。今回ならK塾の解説を読めばいいだけです。もっと本質的な解き方、今後にどう活かすのかを教えていきます。入試問題についての「パッとreviwシリーズ」をお読み頂けるとよくわかるでしょう。

ということで、さっそく第1問から第3問に入っていきます。

 

第1問

東大世界史の第1問は、600字の大論述です。リード文のことはいったん置いておいて、解答作成について要求する第2段落の問題文を「読解」をしていきます。『分かる!できる! 世界史の論述が書けるようになる本 ~講義編~』入試世界史研究会で説明しましたが、主題と副題の設定が重要です。読解とは、この主題と副題の設定のことを指します。

 

本問における主題は「砂糖と茶の生産や貿易に関するイギリスの動向」について「経済的および社会的側面に焦点をあてて」書くことです。後半は副題に回しても良いかもしれません。

副題は「18世紀~19世紀にかけて」「イギリスとカリブ海地域・中国・南アジアを対象に」書くことが求められています。

さらに補足として「生産地と消費地の社会変化」「生産に従事する労働力」も念頭におく必要があります。もちろんこの場合の生産・消費は「砂糖」「茶」についてのみ想定することになります。

 

さきに言葉の定義をしておきます。『分かる!できる! 世界史の論述が書けるようになる本 ~講義編~』入試世界史研究会から引用します。

経済については、

“生産”と“流通”が軸で、近代以降はそこに“金融”が入ってきます。経済につい
て問われたらとにかくこの三つを想起してください。

社会については、

「社会」という言葉は、もともと人間が 2 人以上いるところで生まれる、人と人との
結びつきをいいます。入試世界史では前近代では“都市と農村”と“身分”を考察しま
す。ただし、近代以降は、伝統的な身分制が消滅しますので、今度は“貧富の格差”が
焦点になります。

 

ここまで分解すれば、問題文の読解はほぼ完了です。最後にもう少しかみ砕いて、どのようなissueがあるのかを考え、知識をつかって答えていく。それを再編成して600字にする。これができれば東大世界史も解けるのです。

 

ゆえに、試験会場でするべきことは以下の通りです。

1.「砂糖と茶の生産や貿易に関するイギリス(と関連国)の(国内外における)動向」について「生産・流通」および「身分の格差→貧富の格差」に焦点をあてる。なお、問題文の欠落を自力で補うことはこれまでの東大の過去問でも何度も必要となっている技術なので、今回もできてほしかったです。

2.1の問題を考えるためにフレームワークを整える。年代は「1701~1900」、舞台は「イギリス本土、カリブ海地域、中国、南アジア」に絞って考え、他は捨象する。

3.補足情報をまとめる。「砂糖と茶の生産地と消費地はどこか?→それぞれの”身分の格差→貧富の格差”あるいは”都市・農村の構造変化”はどのようなもの?」を考える。「生産に従事する労働力」は身分、つまりは”社会”の話と強く関係しそうだと仮説をたてる。

 

考えるうえでは、「表」をつくることも大切です。簡単な図表をメモすることで一度バラバラにしたものを600字に再編成しやすくなります。以上の技術はすべて『分かる!できる! 世界史の論述が書けるようになる本 ~講義編~』入試世界史研究会で学ぶことができます。皆さんの世界史勉強に供するので、ぜひご一読ください。

 

このように解くと、K塾の指定語句や模範解答が、K塾自身が作成した模試を正しく解く上で、「怪しいもの」であることが見えてくるかもしれません。それでもかまいません。そういう「気づき」を得ることが、模試を受ける価値でもあるのです。

 

第2問

問(1)

中国の統一についての問題です。このトピックで重要なのは(b)でも出題されている北方民族と漢人の関係についてです。その王朝がどの民族による支配なのかを考えると、支配体制の特徴が見て取れます。支配構造について理解を深めることは極めて重要です。

練習として、以下の問題を解くようにしましょう。

東京大学 2002年第2問

 次に述べるX、Y、Zは、19世紀以降まで数世紀にわたり存続したアジアの大王朝である。これらの王朝には、独自性と共通性がみられたが、それらに関し、以下の(1)~(12)の設問をよく読み、各設問に答えよ。解答は、解答欄(ロ)を用い、設問ごとに行を改め、冒頭に(1)~(12)の番号を付して記せ。

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(A)各王朝は、それぞれ本拠地を移動させながら、形成され発展した。

問(1)Xの本拠地について、移動前と移動後の地点を地図中の記号から選び、ア→イのように記せ。

問(2)Yは、16世紀前半に前王朝をこの地の戦いで撃破し、自己の王朝を創始した。その戦いの地の位置を地図中の記号で示せ。

問(3)Zが崩壊した後に、Zの支配民族は共和国をつくった。Zの首都の位置と新たな共和国の首都の位置を、地図上の記号でア→イのように記せ。﷯

(B)各王朝は、被支配者の信仰や宗教や慣習について、時には融和策で、時には弾圧策で臨んだ。

問(4)Xは、反抗する思想の統制と並行して、大叢書を編集した。その叢書の名前を記せ。

問(5)Yは、16~17世紀の間に宗教政策を大きく変えた。その変化を、関係する二人の皇帝の名を用い、3行以内で説明せよ。

(6)Zには、異教徒処遇の制度があった。その通称を記し、特徴を、2行以内で説明せよ。

 

(C)3王朝には、それぞれ少数民族が広大な領域を支配するという共通性があった。

(7)Xは、自己の軍事組織を支配地域に拡大した。それら軍事組織の構成員に対して与えられた土地の名称を記せ。

(8)YとZには、それぞれジャーギール制、ティマール制と呼ばれる類似の制度がみられた。両者の共通の特徴を2行以内で記せ。

 

(D)各王朝には、支配に反抗する動きが見られた。

(9)Xの統治の初期に、大きな反乱が生じた。この反乱の名称の由来となった地域を、すべて地図中の記号から選んで記せ。

(10)Yの統治に対して、17世紀後半に強く抵抗した王国があった。その本拠地の位置を、地図中の記号で示せ。

(11)Zの支配下では、18世紀に宗教的復古主義を唱える宗派が王国建設運動をおこした。その運動の中心地を、地図中の記号で示せ。

(12)これらの動きの対象となった3つの王朝名を、それぞれにX、Y、Zの記号を付して記せ。

 

問(2)

宗教改革についてはその様相が各地で一様ではなかったことが大切です。

また、今回の(b)は一橋でかつてテーマになりましたが、近年の東大は一橋の過去問に似た出題することが非常に多くなっています。教授の移籍か、あるいはネタ切れか。一橋の過去問もなんとなく知っておくことはかなり大切になってきています。

 

一橋大学 2004年第1問

 宗教改革は、ルターにより神学上の議論として始められたが、その影響は広範囲に及び、近代ヨーロッパ世界の形成に大きな役割を果たした。ドイツとイギリスそれぞれにおける宗教改革の経緯を比較し、その政治的帰結について述べなさい。その際、下記の語句を必ず使用し、その語句に下線を引きなさい。(400字以内)
  アウグスブルクの和議 首長法

 

問(3)

ウクライナ戦争を受けて、ロシアの動向を出題してくる可能性は大いにあり得るでしょう。あわせて、ウクライナポーランド分割などの東欧史が大切です。さらには東方植民についてもポイントを押さえておきましょう。

 

第3問

トータルの解く時間として、この第3問には3分くらいしかかけてはいけません。そして許されるのは1問ミスまで。共通テストも近くなっていますので、このレベルの知識は完璧にしておきましょう。特に中国史の「漢字」です。漢字ミスで得点を失うことがないように、共通テストの勉強の中でも覚えているか怪しいものがあれば、漢字の練習をするようにしてください。

 

来年の東大では何が出るのか?

ここまで、東大オープンを題材として、問題の解き方や、勉強方法についてポイントを整理してきました。しかし、自分でこの作業ができないといけないわけです。特に大論述の解き方は、正しい技術を習得しておく必要があります。そこで、我々の論述の技術を覚えてもらいましょう。それを学ぶのに不可欠な参考書が『分かる!できる! 世界史の論述が書けるようになる本 ~講義編~』です。この本では、論述を書くための頭の使い方、問題文の読み方、効果的な勉強法、汎用性の高いおすすめの過去問を丁寧に教えていきます。

 

さらに、論述の技術があっても、確固たる知識がないと書けないのが論述です。それを担保するには、「傾向」を予測して、重点的に学習することも1つの良い手段でしょう。ぜひ以下のトレンド予想会に参加してみてください。

他にも東大世界史をテーマ別に学びたい方はこちらをクリック!

 

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今年注目! 世界史トピック5選【2022年度最新版】

 明けましておめでとうございます。今この記事を読んでくださっている方の中には、大学受験を間近に控えた高3生や浪人生がいらっしゃるかもしれません。今日はそんなみなさんに、今年の入試で問われそうな世界史のトピックを時事問題から5つご紹介します。

 

 

時事問題を勉強することの意味

 時事問題について取り扱う前に、世界史の入試対策において時事問題を勉強することの意味を確認しておきます。大学の教授は、学生たちに対して、いわゆる「社会」科の科目を暗記科目として捉えるだけではなく、現代の諸問題に通ずる問題として学習する姿勢を求めています。そして常に時事問題にアンテナを張り、日ごろの学習と結びつけることができているかどうかを、入試問題を通じて問うてみようとするのです。

 以上のような問題意識を大学教授たちが本当に持っているかは、近年の過去問からだけでもよくわかります。

2016年の例

・主な出来事:トランプ米大統領当選と世界の保守化(世界史上の「帝国」に通ずる動き)、リオデジャネイロ五輪

・翌2017年の出題:

【東大】第1問「古代帝国の成立」、第2問「少数者」(トランプ氏は少数者への差別的発言を繰り返していた)

【一橋】第2問「ブラジルの独立」

 

2017-8年の例

主な出来事:イギリスのEU離脱の動き

出題:

慶應(法)】2018「イギリスとヨーロッパ大陸諸国の関連史

 

2020-1年の例

出来事:コロナ流行、北京五輪開催において新疆ウイグル自治区の人権問題が取り沙汰、ミャンマーアフガニスタンにおける民主主義の危機

出題:

【東大】2021第3問ペストに関する出題、2022第1問「トルキスタン新疆ウイグル自治区の歴史に深く関係している)」

【一橋】2022第2問コロナ不況からイメージされるニューディール政策

【京大】2022第3問古代アテネ・ローマの「民主政」

【名古屋大】2022第3問「ドレフュス事件(コロナ禍で欧州の一部で反ユダヤ主義が復活)」

 

 他にも、挙げようと思えばキリがありません。超難関大学では、時事問題から安易に想像される問題を問うことはありませんが、中堅以下の大学ではほとんどそのまま問われる可能性もあるでしょう。いずれにせよ、時事問題の構造的背景にある歴史をしっかりと学んでおけば、得点を伸ばしやすいと言えます。もちろん今これを読んでいるあなたが受けるところで100%、時事問題に関する出題があるという保証はありませんが、重点的にケアしておくには値すると言えるのではないでしょうか。

 

今年注目のトピック5選

 それでは、さっそく時事問題に関するトピックを整理していきます。

1、ウクライナ戦争に関するトピック

 まずは昨年2月ロシアがウクライナに侵攻することで始まったウクライナ戦争に関する問題です。直接ウクライナ戦争の歴史を問うてくる可能性は高くないと思われますが、近代ロシアの南下政策(特にクリミア戦争)、東ヨーロッパ史ポーランド史、農奴制と西洋への小麦出荷など)などは警戒が必要です。

 かつてロシアがクリミア戦争で口実にした「オスマン帝国内に住むギリシア正教徒の保護」は、現在のウクライナ侵攻に通ずる側面があります。ギリシア正教会に絡めて、中世以前のキリスト教の東西の対立も出題される可能性があります。

 NATO軍や国連軍がウクライナを軍事支援しないことも、一部からは批判されています。これに関連して、2度の”国連”の違いや限界、NATOに関連してヨーロッパの冷戦史も十分に警戒が必要です。

 

2、コロナに関するトピック

 徐々に経済活動も復活してきたとはいえ、まだまだコロナの影響はぬぐい切れない現実があります。感染症については、中世ヨーロッパのペスト流行がやはり一大テーマでしょう。感染症をヨーロッパと新大陸が相互に持ち込みあったという観点から大航海時代についての出題もあるかもしれません(実は今年の日本では大航海時代に南米からヨーロッパに持ち込まれた感染症が流行していました)。

 経済の停滞・不況については、世界恐慌に関する問題は出題される可能性があります。実際に昨年の一橋は出題しました。有名大学同士は、翌年に問題を真似しあうという現象が極めて頻繁に見られるので、東大・京大・東京外大・阪大・名大・九大などを志望している人は、世界恐慌ニューディール政策に警戒が必要です。「ニューディール政策の輸出」に絡めて、戦後のアメリカ外交も勉強しておきましょう。

 

3、カタールW杯に関するトピック

 W杯やオリンピックのようなスポーツ大会に関係のある、あるいはそれに際して話題になったテーマは問題の材料になりがちです。これは意外と入試世界史の業界でも盲点なんです。2022年の東大の第1問もトルキスタンの問題で、新疆ウイグル自治区の近辺が舞台になっていましたが、これは北京・冬季五輪の開催に関係して問題になった地域です。それに関して言えば、昨年のW杯ではイスラーム世界の女性の地位や、移民労働問題が話題になりました。その関連で、イスラームの女性史や世界の女性史、アジアの移民(華僑や印僑)が出題される可能性は多いにあると思ってください。

 とにもかくにも、今年はイスラーム関連のテーマが多く出題される可能性があるのです。湾岸戦争からも30年以上たちました。世界史では30年経った出来事は出題の可能性が高くなると考えてよいので、戦後の中東問題もしっかり勉強してください。イラン革命について説明できるようになりましたか?そういうピンポイントのテーマに答えられるようになりましょう。

 

4、国家元首に関するトピック

 昨年は著名な(元)国家元首が亡くなりました。世界史ではエリザベス女王が亡くなったので、イギリス史の出題の可能性は高いでしょう。特にイギリスの国王と議会の関係は中世からのテーマです。中世以来のイギリスの政治体制の変遷について、史料集などで追っかけてみてください。そのまま出題される部分があるかもしれません。

 いわゆる○○帝国の皇帝についても有名な人物の勉強はしておくとよいです。ロシア帝国などはウクライナ戦争とあいまってさらに出題される可能性が高いです。エカチェリーナ2世は女性の国家元首としてエリザベス女王との共通点がありますので、エカチェリーナは特に警戒です。

 

5、歴史総合に関するトピック

 世界史がマクロの勉強であるとしたら、日本はミクロ世界史の一つでもあります。日本が他国との間にどのような歴史的関係を築いてきたのかをもっとちゃんと勉強する必要があるのではないかという風潮が強まっています。その中で歴史総合という科目を作り、日本史と世界史を同時に教えようという試みが始まったのです。その影響か日本と東アジア諸国を絡めての出題が以前より増えているように思われます。

 中華思想がアジアの諸国に広がっていき、それに基づく政治が行われたことは知っているでしょう。朝鮮の小中華思想も、江戸幕府の政治や外交も中華思想のミニバージョンと表現されます。「変容する近代東アジアの国際秩序」(山川出版社)という本がこの分野で得点を伸ばすのに向いた本となっています。購入して直前期の勉強のスキマ時間に読んでみるのはいかかでしょうか。

 

最後に

 世界史が得意でさらに得点を伸ばしたい方はトピックをどんどん勉強してください。逆に世界史が苦手で勉強するポイントを抑えておきたい人もトピックをベースに勉強していくと良いでしょう。

 難関国公立を受験する方は、特に論述のテーマとしてトピックからの出題が増えます。論述演習テキストや予想問題を解いてみてください。添削サービスも提供していますので合わせてご利用ください。世界史を一気に合格点に持っていきましょう。

 

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