皆さん、こんにちは!
今回は2024年の東大世界史の講評をやっていきましょう。著作権の関係から問題文全体の掲載はやめておきます。
<目次>
第1問
なんと長年続いた大論述が分割され、360文字+150文字になりました。1989年以来、35年ぶりの出題形式の変更ということになります。
ただし重要なのは問題が何を問うているかであって、資料として与えられた文章の内容をしっかりと理解した上で、問題の主題と副題に対して素直になって解くべきです。実際に問題を解く際には、まず主題と副題の整理をしてから、それに基づいて資料の分解をしてみましょう。
資料の演説の冒頭では、「世界では二つの変化が並行して進みつつあり、戦争いらい、重要性を増してきました。一つはおもに政治的な、もう一つはおもに経済的な変化です。」とあります。問1で「政治的な」、問2で「経済的な」変化について問うていると考えてよいでしょう。
またこのシリーズで毎年のように書いていますが、東大世界史は一橋世界史と交差しています。このアフリカ独立の年前後の問題は、昨年の一橋大学で出題されたテーマと関連しています。近年の東大や一橋の出題を見ている限り、「脱-欧米中心主義」や「世界史の中の日本史」などが頻出テーマになっています。
東大の過去問で言えば、2016年が「1970年代後半から1980年代にかけての東アジア、中東、中米・南米の政治状況の変化」、2012年が「アジア、アフリカにおける植民地独立の過程とその後」ですから、現代史を深く理解しておくことは東大受験生にとって必須です。
問(1)
まずは問題文の主題と副題を整理します。
<主題>
1960年代のアジアとアフリカにおける、このような戦乱や対立(<副題>を参照)について記述せよ。
<副題>
・諸民族の政治的解放が進んだが、道のりが容易ではない場合も多かった。
-「独立を得る過程で戦乱が起こった」「独立した国どうしが対立を深めた」など
・指定語句:アルジェリア コンゴ パキスタン 南ベトナム解放民族戦線
(独立した近隣国との)対立:パキスタン(vs.インド)、南北ベトナムの対立
指定語句に関連しない事例については、今回に限っては書かない方がよいでしょう。
このように考えると360字はあっという間に埋まってしまいそうです。この解法は本会の通期の講座で常に伝えてきたことですね。それぞれの内容については自分で教科書や史料集を使って調べるようにしてください。あまり細かい知識をネットで調べて記述しても、本番で求められている能力とは異なる解答例ができてしまうことになります。あくまでもベースは教科書と史料集です。
問(2)
まずは主題と副題を確認します。
<主題>
1演説で述べられている経済的な問題の歴史的背景
2その解決のために1960年代に国際連合がおこなった取り組み
<副題>
なし
扱われているテーマは現在の「南北問題」であり、世界全体の分業体制がひかれたことによって、いわゆる「周辺」がモノカルチャー経済になっていることを書く問題です。
これは「近代」の象徴的な現象と言えますが、これでは途上国は苦しいまま。そこで国連は世界レベルで対策を打つことにします。それがUNCTADです。
この問題の思想的、学問的な背景にはウォーラーステインの「近代世界システム」論があります。「近代世界システム」という語句自体を論述の中に入れてみるのも必須ではありませんが、悪くはないセンスでしょう。
第2問
昨年と同様に、第1問に近現代史を出題しておいて、第2問では古代、中世、近世のキリスト教世界、イスラーム圏、東アジアを幅広く出題してきました。今後、東大の出題傾向としてある程度定着するかもしれません。
問(1)
新約聖書が、1世紀末から4世紀末にかけて次第に現在の形へと変化していったことを前提にした問題でした。特に(b)などは出題の仕方が東大らしく、何を説明すればよいのか不明瞭です。このような問題に直面した時には、「5W1H」や「政治・経済・宗教・社会・文化」に注目するのでした。とはいえ分かっていても、90字にまとめるのは技術と経験の両方が必要となります。
問(2)
昨年建国100周年を迎えたトルコの歴史です。少しだけ自慢(?)をすると、本会が冬に繰り返し実施し、参加者の皆さんからも高評価を頂いた『トレンド徹底予想会』では、トルコの建国100周年であることを受けて、押さえておくべきだと言っていました。
こうした予想は、当てずっぽうなわけではありません。こういう○○周年問題は頻出なんです。受験生が○○周年をいちいち調べなくてもいいように代わりに調べて、受験生の皆さんにお伝えしただけです。
今年度も秋以降、『トレンド徹底予想会』を開催します。他にも有益な情報を常にアップしているX(旧Twitter)のフォローはこちらから!よろしくお願いします!
問(3)
どの大学でも頻出分野である清がテーマでした。この問題は絶対に落とすことのできない問題です。
第3問
(10)が今回の第3問では最も印象的でした。第1問の解説の中で、「近年の東大や一橋の出題を見ている限り、『脱-欧米中心主義』や『世界史の中の日本史』などが頻出テーマになっています。」と書きましたが、この問題はそれをあまりに直接的に表現している問題だったからです。
その他、(6)のサティも知らない人は知らない問題だったかもしれませんが、それ以外の8問は絶対に正解しないといけないような問題ばかりでした。
参考書と講座のご紹介
この解説の中でも時折説明したように、論述を書き上げるには知識だけでなく、技術や経験が必要となります。それを身に付けられる参考書や講座は、世の中にそれほど多くありません。
本会は、特に地方に住んでいて、大手予備校の授業を受けることのできない受験生をサポートしたいと考えて、書籍やオンライン講座を用意しています。もちろん都会の受験生も、本会のサービスを活用したい方は大歓迎です。1人1人に向き合って丁寧にサポートします。その分受け入れ人数はかなり限られているので、ご希望の方はお早めに!
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・通期講座(詳細はリンクから別ページでご覧ください!)
1「個人特訓」
2「入試世界史演説ゼミナール」