入試世界史研究会

世界史を得点源にしましょう!!

2024年 共通テスト【世界史B】の講評、あるいは考察

みなさん、こんにちは!そして受験生は大変お疲れ様です。

 

先ほど実施されました共通テストの世界史Bについて、簡単な講評を行います。また問題から読み取れることを世界史的な観点で考察していきます。東大や一橋などの難関国公立を受験する人は、必ず最後まで目を通してください。

 

各大問の太文字は、その大問の復習ポイントです。第一志望の二次試験の受験日までによく復習しておいてください。共通テストや併願校で解いた問題について、ある程度復習しておくと、第一志望の本番でも役立つことがあります。

 

全体の講評

問題のレベルはとても易化しました。去年の共通テストが分量も多くレベルも難化したとの評価を受けていたので、バランスを取るためにレベルを下げたのでしょう。大問の数が5から4になりましたので、それも受験生の心理的な負担を軽減することになったのではないでしょうか。

本会で学んだ皆さんが他の受験生と差をつけるためにも世界史のレベルは落としてほしくなかったというのが本音ですが、、

毎年のことですが、共通テストは解き方のツボさえ押さえておけば、今回も十分高得点が目指せます。大量の資料に付き合わないことがポイントです。

 

それでは、問題ごとの講評に入っていきましょう!

第1問

 Aでは中国の皇室一族による分権の長短、Bでは中世イングランドの政治、Cでは現代イギリスの福祉制度について出題されました。いろいろな資料を見せられて、あたかもそれを読まないと解けない問題であるかのように見えます。しかし、史料が多い時はまずは問題文から読むようにしましょう。

 A、Bは単なる資料の読みとりと極めて簡単な知識の確認でしたので特に解説するようなことはないかと思います。Cは「現代」という言葉の定義を考える上で大切な問題となります。本会の執筆した難関大学用の論述参考書である『分かる!できる!世界史の論述が書けるようになる本 ~講義編~』では、現代という言葉を以下のように記述しています。

 現代の起点は様々な点に見て取れます。本書では第二次世界大戦後に現代が始まったということにします。しかし他の学説もご紹介します。例えば、ヨーロッパ史の文脈において大衆社会の成立を現代の起点とみなすならば第 1次大戦直後から現代が始まったと捉えることができますし、また福祉国家の形成を現代とみなすならば 1880 年代のビスマルクの労働者保険導入も現代の起点となります。また同じく 1880/90 年代は、現代史上、現代に続く高度工業化(=自然科学の応用にもとづく電機・化学・医薬品産業の発展)の起点とされます。

 このCについて、近代史と分析する予備校は多いかもしれませんが、我々はこれを「現代の幕開け」についての問題であると考えています。

 

第2問

 Aではアレクサンドロス大王の地域や時代ごとの評価、Bでは大陸国アメリカの展開、Cでは朝鮮戦争と「共産主義」について出題されました。

 この大問は良問が多かったように思います。難易度も程よく、資料の読み込みと世界史の知識を組み合わせて解く問題も出題されていました。特にアレクサンドロス大王の評価が地域や時代によって異なるものであったことは、高校の世界史の授業では教えてもらえないことですが、資料と知識があれば良く分かる事実です。またCは、現代史を勉強しないと痛い目に合うことが教訓になるセットでした。現代史は共通テストでもしっかりと出題されます。嫌っていないで早めから対策するようにしておきましょう。特に今これを読んでいるあなたが高2以下であれば、これを教訓として現代史の勉強を頑張ってください。

 またイデオロギーとか自分たちの文明とかを押し付けあってきた歴史もこの3つの問題からは見て取ることができます。世界史はイデオロギー文明の衝突によって展開されてきたということを示しています。ミクロの視点で年号や出来事を暗記するのも受験勉強では仕方のないことかもしれませんが、ぜひマクロの視座に立ってイデオロギーの対立構造を考えてみる、支配-従属関係を整理してみるという営みを楽しんでください。そのような思考法が大人になってからも役に立つはずです。

 

第3問

 Aではインドの交通、Bではアメリカ的帝国主義の展開、Cでは19世紀ロシアの拡大について出題されました。

 中世はあまり出ないのですが、かなり古代と近代以降の出題割合が高くなっています。まさか大問で2問続けて近代アメリカ史をテーマにしてくるとは思っていませんでしたが、得意な人が多い分野でもあるのでここの出来はよくないと困ります。

 Cのロシアの問題は、テーマが「鉄道」ということでウクライナ戦争のことを意識していると思わざるを得ない出題でした。大問のリード文にもあるように、交通は社会経済史を考える上で非常に重要なジャンルです。それとともに「通信」も近代史の重要トピックです。二次試験では「通信」の方が出題される可能性もあるので、不安な人はイギリスなどの欧米列強が近代以降において発展させてきた「通信」の歴史も復習しておくと良いでしょう。

 

第4問

 Aではアジア諸地域の文化と宗教、Bではコロンブスと近世ヨーロッパ、Cでは前近代の中国史について出題されました。

 第2問に続いて、こちらも良問のセットとなりました。資料の読み込みに時間をかけすぎるのもよくないですが、全く読まないで解くのは難しいというレベルにちょっとずつ近づきつつあるのかもしれません。この大問はそれを予感させる出題となっています。ただしそれにしては求めている知識レベルが高くありません。Cは中国史について問われていますが、これも知識レベルが低いように感じられます。グラフ問題が出ましたが、これは丁寧に対応してあげればよいでしょう。

最後に

 これまでの共通テストの中でも、問題のレベル自体は易化していましたが、出題形式として資料だけでも知識だけでも解けない問題を増やそうという意識づけは見られました。今後、受験生は二次試験に向けてラストスパートに突入していくと思いますが、自信をもって頑張ってください!!

 なお、毎年恒例の『共通テストを論述問題に発展させてみた』は今週中に配信します! X(旧Twitter)で続報を出しますので、フォローしてお待ちください!